洋書屋トトの読書生活

トトは古代エジプトの知識の神。この世のあらゆる知識を込めた42冊の本を書いたとされています。

ネタバレあり 映画【MAMA】ママ、怖すぎ…

昨日に続き、不要不急の外出を控えるための、Amazonプライムでの映画鑑賞です。

2013年のスペイン・カナダ合作の超自然ホラー。ジャパニーズ・ホラーっぽい感じがありますね。ギリギリという異常な動きや髪の毛がモサモサするところとか、私、ダメなほうです。怖がりなので。

行方不明の幼い姉妹が、5年後に森の中の小屋で発見されます。しかし、何者かが世話をしていたような痕跡があり、しかも少女たちはまるで獣のように育っていました。二人は叔父の家に引き取られますが、二人が「ママ」と呼ぶ黒い影が、家に現れます。叔父の恋人のアナベルは二人と暮らそうとしますが、心をなかなか開かない姉妹と、幽霊のような奇怪な黒い影に怯えます。

異常な行動を取り続ける妹、そして少しずつ人間らしさを取り戻す姉との関係。また、姉妹とアナベルとの、ぎこちないながらも、少しずつ生まれるつながり。そして、明らかになっていく黒い影の悲しい過去…。

アナベルは夢で、ある過去の映像を目にします。イーディスという醜く精神を病んだ女性が、生まれたばかりの赤ん坊を取り上げられます。狂乱した彼女は、子供を取り返してそのまま崖から身を投げます。しかし、崖の途中で赤ん坊の着ぐるみが枝に引っかかり、子供だけが助かってしまい、イーディスと赤ん坊は結局一緒にいれませんでした。赤ん坊は死に、市の倉庫の奥深くに遺骸が保管されることになってしまいました。そしてイーディスは黒い蛾の大群となり、飛び立っていきます。

黒い影の幽霊は、黒い蛾となって我が子を求めて彷徨い続けるイーディスの魂が変化したものだったのです。そして、イーディスは森の中の小屋で、幼い二人の少女と出会ったのでした。

姉のヴィクトリアは失踪前から視力が弱く、発見され、引き取られるときにメガネをもらいます。このメガネはヴィクトリアとイーディスとの関係性を表すキーアイテムとなっていました。イーディスが訪れるときは、ヴィクトリアはメガネをはずします。イーディスに、人間の世界へと戻ろうとしている自分を見て欲しくないからか。またはイーディスの醜い姿をはっきりと見たくなかったからか…。

ラスト近くで、イーディスはヴィクトリアのメガネをそっと外させます。こっちの世界へおいでと言いたいのか、それとも自身の姿を見られたくなかったのか。イーディスの母性を感じさせるシーンでした。

妹のリリーは完全に母としてイーディスを慕っています。イーディスが訪れても顔を見せようとしないヴィクトリアに苛立ちをみせます。

完全に母としてイーディスを愛する妹と、距離をおき始める姉。ヴィクトリアは「ママ」を人でないもの、として恐れ始めます。お姉ちゃんの揺れる気持ちと、アンジェラに対して親しみを感じ始め、ヴィクトリアの気持ちは揺れます。アンジェラは、自由で芯の強い女性。しかし家族というものからは縁遠い雰囲気があります。妊娠検査薬で陰性を喜んでいる様子は、母になることを拒んでいる感じでもありました。そんなアンジェラだからこそ、人間社会から隔絶された環境で育った姉妹とも何とかやっていけたのかもしれません。

しかし、二人を連れ去ることに成功したイーディスは、あの崖の上で姉妹と一緒に「向こうの世界」へ去ろうとします。アンジェラは間一髪間に合いますが、リリーだけはイーディスを選び、二人は本当の母娘のように救われた表情で抱き合いながら、崖の下へと消えたのでした…。

ありがちなんですけど、幽霊の全貌が見えるまでが一番怖い。クローゼットやドアの向こうの暗闇のなか、そこにいるのかいないのか…。また、視界の端を通り過ぎたり、ベッドの下に潜んでいたり。こんな家、絶対住めない!

でも全部見えてしまったら、いわゆる「モンスター」になってしまいます。まあ、怖がりからすれば、安心して観れるようになります。

そしてこの映画も、そうなってからは展開がバタバタとして(あの、広げた風呂敷を大急ぎでしまうような)、あれっとなるのですが、ラストはちょっと感動して、面白かったなー、と観ることができました。

この映画の見所は、ジェシカ・チャステイン。姉妹の伯父の恋人のアナベルを演じています。母親代わりという役柄ながら、バンドでベースを弾いていたり腕は入れ墨で覆われている、カッコいい女性。アナベルが「行くよ!」というと、姉妹がちょこちょこっとついていく姿がかわいい。

ジェシカ・チャステインは、この映画と同じアンディ・ムスキエティ監督の映画『IT』の続編『IT/THE END “それ”が見えたら、終わり。』で大人になったベバリー役を演じています。そういえば、この幽霊ってITにでてきた、絵から抜け出てきた奴に何だか似てる気が。あの、ホラーっぽいモディリアーニの映画みたいな人。

あと、この映画、男性も数人出てきますが、みんな影がうすくって、あらすじを書いてても、一切出てきませんでした…。