洋書屋トトの読書生活

トトは古代エジプトの知識の神。この世のあらゆる知識を込めた42冊の本を書いたとされています。

『Where the Crawdads Sing (日本語訳書名:ザリガニの鳴くところ)』(Delia Owens )

ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

(日本語訳書の商品解説より)

6歳の少女が、ひとり湿地の粗末な家で暮らしているという、悲惨な状態。しかしKyaは美しい自然のなかで多くの生き物と暮らしながら、寂しく傷ついた心を抱えて強く生きています。

自分たちのコミュニティからはずれた人を見るとき、私たちは深くその人を知ろうとするよりも、「変人」のレッテルを貼って、何か問題を起こすとか近寄らないほうがいいとか、蔑んだ目で見てしまいがちです。 その残酷な態度や目線が、物語ではKyaを不幸に追い込みます。読者は彼女の境遇に同情しながらも、実際の生活では私たちは彼女を不幸に追い込む側にもなっているかもしれないのです。そのことに、私は胸が痛くなりました…。

単語はそれほど難しくなくないですが、ところどころ出てくる植物や鳥の名前でいちいち辞書を見たりして、結局読み終わるのに時間がかかりました。セリフで英語の訛りがあるところもあって、見たことがない単語?と思ってしまいましたが、 dawder(daughter)やsump'm(something?)になったりしています。慣れればなんとなく想像できるので、そこまで難しくはないかなと思います。

また、少女の頃と、大人になった頃と、章ごとに物語の時間が前後しながら進むので、ちょっと混乱するところがありました。

日本語訳の『ザリガニの鳴くところ』はこちら。 原書は、上のように表紙が映画のイメージに変わってしまったのですが、 やはり元の表紙の方がいいですね。